しおたまごの体験談ブログ

筆者が体験した病気や介護、日常のことなどをご紹介するブログです。

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祖父の介護④認知症の祖父に怒ってしまった失敗談!怒らないための対処法は?

この記事は、私が祖父(2018年7月に永眠)の介護にかかわった約8か月の体験を元にしています。

私は介護にかかわること自体初めてで、何の知識もありませんでした。そんな私が最後まで祖父の介護にかかわることができたのは、ケアマネージャーさんやヘルパーさん、訪問看護師さん、主治医の先生など多くの人達の助けがあったからです。

今になって当時を振り返ると、「あの時ああすればよかった」など反省することも多いです。その体験が少しでも誰かの役に立てば嬉しいと思い、記事にすることにしました。

この祖父の介護の記事は私の実体験を語りながら、感じたことや反省したこと、そして介護や医療関係者から受けたアドバイスなどもご紹介します。 

 

 

今回は認知症の祖父に対して私が怒ってしまった失敗談と、2度と怒らないようにするためにとった対処法についてご紹介したいと思います。

認知症の祖父に対して怒ってしまった!

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祖父が退院してから5日後、私と母は我が家から1時間強かかる祖父の自宅に向かいました。理由は前日電話をかけてきた祖父の様子がおかしかったからです。(この件は祖父の介護②で詳しくお話ししています)

 

この日、私は初めて祖父に対して怒りました。これが最初で最後でした。ちなみにこの時点では、祖父が認知症だとは思っていませんでした。

 

祖父は90歳だったので認知症を疑うべきでしたが、入院先の主治医の先生に「頭はしっかりしている」と言われていたので「認知症ではない」と思い込んでいたのです。

NTTとしか契約してない!と怒鳴られる

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祖父はどうも、私が2日前に新しく設置した電話が気に入らなかったようで

 

「その電話とは契約してないから使えない!NTTとしか契約してない!」

 

などと意味不明なことを怒鳴りました。そのとき祖父は定位置であるダイニングテーブルの奥の席に、まるで王様のようにどっかりと座っており、母は祖父のために購入してきたものを、使いやすいようにと忙しく片付けている最中でした。

 

そして私は祖父が電話についておかしなことを言うので、一応電話に問題がないか調べているところでした。

 

しばらく電話について意味不明な文句を言い続ける祖父を母がなだめていましたが、らちがあきません。私は我慢できなくなって大きな声を出しました。

 

「NTTとか関係ないです!この電話は使えます!」

 

というようなことを言ったと思います。

この日まで私と母がどれだけ苦労したか

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補足ですがこの日まで私と母は「退院した後のことを考えて生活環境を整えてください」と主治医の先生に言われたので、祖父が入院している間に、毎日のように自宅から1時間強かかる祖父の家に通って片付けをしていました。

 

祖父の介護②でご紹介していますが、大量のゴキブリやうじ虫がわいているなど、祖父の自宅はかなりひどい状態だったのです。そんな地獄のような状態から、私と母が必死になって片付け、どうにか人が住める状態にして、祖父を迎えたんです。

 

他にも入院手続きやお見舞い、主治医の先生からの説明や電話、退院のときの迎え、ケアマネージャーさんとのやり取りなど、初めてやることばかりで怒涛のような日々。正直ヘトヘトでした。

 

そのうえ新しく設置した電話は、足が悪い祖父が、自室でも電話をとれるように子機があった方がいいと考え購入したものでした。実は祖父が入院することになった日、朝に私の父が祖父に電話をかけたのですが、連絡がつかなかったのです。

 

両親が祖父の自宅に向かうと、祖父は自室で動けなくなっていました。そういったことがあったから、自室に子機があった方がいいと考えたのです。私は祖父にもそれをきちんと説明し、そのときは祖父も「ありがとう」と言っていました。

私が怒鳴った声の大きさに驚いて黙っただけ

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そういったことを全て含めて、私は怒りが抑えられませんでした。祖父は私が大きな声を出した瞬間、身体をビクリとさせすぐに黙りました。私は特に暴言を吐いた訳ではなく敬語も崩していなかったのですが、祖父は声の大きさに驚いたようでした。

 

私がそのあと声のボリュームを落とし改めて電話について説明すると、さっきまでとは別人のように「はい」と返事をして文句を言うことはありませんでした。

 

私を上目で伺う祖父の目には、怯えのような感情が見えました。祖父は誰もが認める頑固者で文句や嫌味をよく言う人だったので、そんな怯えたような目を見るのは初めてでした。

 

それを見て私はハッとしました。祖父は黙りましたが、怒鳴られたから黙っただけで納得した訳ではありません。

 

問題は何も解決しておらず、それどころか祖父は私に対して悪い感情を持ったはずです。これではどちらにとっても良いことはない、と私は反省しました。

 

この直後に私は電話でケアマネージャーさんに祖父の言動を伝え、そこで「それは認知症の症状です」と告げられました。その数時間後に、祖父は警察を呼ぶという事件を起こします。

 

私はこの失敗の日を最後に、祖父が亡くなるまで怒りを覚えることは何度もあったものの、怒鳴ることは2度とありませんでした。

怒ってはいけない!信頼関係をつくることが大切!

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認知症の人に対して怒ってはいけない、というのは聞いたことがある人も多いと思います。私もそのことを知っていましたが、実際に接して面と向かって理不尽なことばかり言われると我慢するのは難しかったです。

 

大体どんなにひどいことを言われても一切怒らないなんて、菩薩じゃあるまいし無理でしょう。

 

私はケアマネージャーさんに、祖父との接し方について相談しました。すると「信頼関係をつくることが大切」と言われました。

祖父の信頼を勝ち得る必要がある

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すぐには意味がわからなかったのですが、続けて「信頼関係がなければ、こちらの意見を受け入れてもらうこともできないでしょう」と言われハッとしました。

 

確かにそうです。自分に対して怒鳴る人を信頼することなんてできません。当然そんな人の意見を受け入れようなんて思うはずがありません。

 

祖父の介護費用は祖父自身が支払っていたので、介護に関することは全て祖父の許可がなければ話を進めることができませんでした。例えば「週に〇回ヘルパーさんに入ってもらった方がいい」などと提案しても、祖父が「必要ない」と言えば話は終わりです。

 

祖父は認知症で判断能力が落ちており、どう見てもヘルパーさんの助けがもっと必要なのになかなか認めようとしませんでした。

 

かといって私が四六時中祖父の世話をする、というのも不可能でした。となると、私の希望通りに話を進めるために、祖父の信頼を勝ち得る必要があります。

 

打算的ですが、そう考えると怒りを抑えることができました。要するに、自分のために怒りを抑える訳です。ここで怒鳴れば後で自分が苦労するだけだ、と。

 

そんな怒りの抑え方はけして褒められたものではないと思いますが、たとえば「菩薩のような心で怒りを抑えて」と言われるよりは、現実的だと思います。

理不尽なことを耐える対処法は理由を知ること!

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ただ残念なことに、怒りを抑えるだけでは対処法として不十分です。認知症の人は同じことを何度も繰り返し訴えてくるので、怒りを抑えるのも限界があります。

 

そこで私がとった対処法は、理由を考えることでした。たとえこちらにとって理不尽な訴えであっても、それを訴えている認知症の人にも言い分、つまり理由があります。祖父と接して私はそう感じました。

 

理不尽なことを言われて怒りを感じるのは、納得できないからです。でも理由を知って納得できれば、怒りを抑えることができるはずです。

 

そのうえ理由を知ることで、本人が何を望んでいるのかも知ることができます。その望みを叶えることができれば、訴えそのものをなくすことができる場合もあるのです。

 

理不尽な訴えに対してまずは怒りを抑え、次に理由を考え、そこから分かる望みを叶える、もちろんそれで全て解決できた訳ではありませんが、この対処法で私は2度と祖父に怒鳴らずに済みました。

「その電話とは契約してないから使えない!」を解決した方法

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では最初にご紹介した、私がこの1回のみ怒鳴ってしまった件をどう解決したかについてお話ししましょう。

 

この電話の件は、その後何度も繰り返し祖父から文句を言われました。これは祖父の介護②でもご紹介していますが、祖父の訴えは

  • 「子機からバカヤローと聞こえる」
  • 「液晶画面にも数字でバカヤローと出る」
  • 「おまえのとことなんか契約してないと怒鳴られた」

など、内容は意味不明でした。

 

祖父の言っていることは全て妄想や幻聴の類で、現実には起こりえないことばかりです。それなのに「電話を設置したおまえ達が全て仕組んだ、嫌がらせだ」と言われました。

 

更に言葉だけでなく、子機をコンセントごと引っこ抜き、床に投げ捨てていることもありました。

 

当然ですが私は祖父の言うようなことはしていないので、腹が立ちました。電話を設置したのは全て善意で、悪意などひとかけらもありません。なのになぜこちらが責められなければならないのか、と怒りを覚えました。

 

ただここで怒鳴っては失敗の繰り返しなので、私は最初「そんなことがある訳がない」と言いました。更に「仮に電話から「バカヤロー」と聞こえるようにしたとして、私達に何のメリットがあるんですか?」と訴えました。

 

これは失敗でした。祖父は顔を背けて口の中でブツブツ言うばかりで、まともな返事はかえってきません。ただ私の対応に不満を持っていることはわかりました。

認知症の人が訴えることは否定してはいけない

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そこで私は対応を変えました。しばらくして祖父がさっきと同じ訴えをしたとき、それが本当に起こったものとして言葉を返したのです。

 

たとえば

  • 「子機から「バカヤロー」と聞こえたんですか。それはひどいですね」
  • 「おまえのとことなんか契約してないと怒鳴られたんですか。それは失礼な話ですね」

といった感じです。

 

もちろんそんなことある訳がないんですが、認知症の祖父は実際に起こったことだと思っています。それをこちらが否定しても不満がつのるだけで、「自分の言うことをまともに聞いてくれない」とこちらに悪い印象を抱いてしまいます。

 

でも逆に否定せず相手が言うことを事実として受け入れると、「自分の話を聞いてくれる」と安心するようです。

 

実際私が対応を変え、祖父の言うことを否定するのではなく肯定すると、ガラリと態度が変わりました。顔つきがやわらかくなり、「あんたはよう分かっとる」と言ったのです。

不満に思っていることを解決するような返事をする

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ただこの電話の件はこの日以降も延々と同じ訴えをされたので、私もそのたびに同じ答えを返していてはらちがあきません。

 

なので何度目かの訴えのときに

「電話をしてきた会社にきちんと話しておきますね」

などと返すようにしました。

 

するとその話はしばらくしなくなりました。祖父が不満に思っていることを私が現実的に解決するために動きますよ、というような返事をしたことで、満足したのかもしれません。

 

その後また同じ訴えをされたときは

  • 「電話をしたけれど担当者が席をはずしていた」
  • 「今事実関係を調べてもらっている」

など出まかせですが、とりあえずその場を乗り切れるようなことを言うようにしました。するとその訴えは徐々にですがなくなりました。

祖父が電話について文句を言い始めた理由は?

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私が対応を変えたことで祖父の電話に対する文句は最終的にはなくなりましたが、そもそもなぜ祖父は電話について文句を言い始めたのでしょうか?

 

それが気になって後から考えてみたのですが、恐らく自分に断りもなしに勝手に電話を変えられたことが気に食わなかったのかな、と思いました。

 

子機に関してもこれがあるから購入したのですが、結局祖父は使い方を覚えることはできませんでした。祖父は子機を見るのも初めてだったようで、本人からすると未知の機械だったんでしょう。

 

それに元々あった電話は私達から見ると古くてひどく汚れたものでしたが、もしかすると、祖父にとっては愛着があったのかもしれません。

親切のつもりでしたことが実は迷惑だった?

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更に祖父の介護②でご紹介しましたが、祖父の自宅は私達が片づけたことで以前と様子が変わっていました。このことも祖父は「ありがとう」と言っていたものの、それはきっと本心ではなかったのでしょう。

 

つまり私達は親切のつもりでしたことだったんですが、祖父にとっては迷惑なことでしかなかったのだと思われます。

 

私達が電話を購入する前に祖父に相談していれば、もしかすると祖父も文句を言うことはなかったのかもしれません。

 

ただ祖父に事前に相談しなかったのは、祖父が入院中だったことや退院後の生活環境を整えるのに忙しかったこと、更に祖父に相談しても「いらん」と言われるだけだろうと思ったから、などこちらも言い分があります。

 

ただこの一件はその後の祖父に対する接し方を考えるにあたって、大きな勉強になったと思っています。

まとめ

今回は認知症の祖父に対して私が怒ってしまった失敗談と、それをどのように解決したかなどをご紹介しました。

 

私は介護に関する資格を持っている訳ではなく、認知症の人の介護にかかわること自体初めてでした。なので今回ご紹介した私のとった対処法が、正解!と言いたい訳ではありません。

 

祖父が怒った理由も私なりに考えてみたことですが、全くの的外れかもしれませんし、私が自分のとった対応で解決できたと思っていることも、祖父が折れてくれただけという可能性もあります。

 

それでも電話の件で怒鳴ってしまった失敗を、最初で最後にできたことは事実です。怒鳴ってしまうと後で舌の上に残った苦みのような、独特のイヤな気分になります。

 

お互いのためにもならないので、私のような失敗をしないように、自分なりの方法を見つけてみてください。